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2025年07月07日

社会保険労務士を廃業するには?事業やクライアント先の引き継ぎはどうする?



年齢や健康、家庭の事情によって「廃業を検討している社労士」は少なくありません。


しかし、廃業を検討するにあたって「クライアントにどのような影響があるのか?」「契約の引き継ぎはどうすればいいの?」「従業員を路頭に迷わせてしまうのでは?」とさまざまな悩みが出てくるでしょう。


本記事では、廃業を検討する社労士に向けて、スムーズな廃業を行うための準備と方法を解説します。


社会保険労務士が廃業する主な理由


帝国データバンクの調査によると、2024年の社労士の廃業率は5.56%でした。


これは、5.61%の税理士事務所に次いで、2番目に高い廃業率になります。


順位
職種
廃業率
1税理士事務所5.61%
2社会保険労務士事務所5.56%
2米穀類小売業5.56%
4豆腐・油揚製造業5.25%
5牛乳小売業5.03%

引用元:帝国データバンク「全国企業「休廃業・解散」動向調査(2024 年)」


社労士の廃業率が高い理由は、以下の5つの理由が挙げられます。



  • 高齢や健康上の問題

  • 家庭の事情

  • 収入の不安定さ・顧客の減少

  • 時代の変化への対応が困難

  • 後継者不在


廃業を決断する際には、さまざまな心理的・法的・実務的リスクが伴います。


たとえば、突然の廃業によって顧客や関係先との信頼関係が損なわれる可能性があります。


また、未処理の労務トラブルや行政手続きの不備が残っていると、廃業後に訴訟などのリスクに発展するケースも。


さらに、保険や年金手続きの見落としによって、自身が一時的に無保険状態になる恐れもあるため、注意が必要です。


高齢や健康上の問題


1つ目の理由は社労士業界の高齢化と、それに伴う健康上の問題です。


日本の社労士は年齢層が高く、60歳以上が全体の約40%を占めます。


もっとも多いのは50代、次いで40代となっており、20代、30代が極端に少ないのが現状です。


開業社労士では、高齢者比率はさらに高くなります。


※全国社会保険労務士連合会「社会保険労務士 2024年度版」を元に作成(https://www.shakaihokenroumushi.jp/Portals/0/doc/nsec/souken/2024/hakusho/zentai2024.pdf)


下記のグラフは、弁護士の年齢構成です。


※日本弁護士連合会「弁護士白書2024年版」を元に作成(https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/statistics/2024/1-1-1.pdf)


弁護士は男女ともに30〜40代の割合がもっとも高くなっており、60歳以上の割合が少ないことがわかります。


したがって、社労士は士業のなかで高齢化が進んでいるといえるでしょう。


社労士には定年がないため、本人次第で長く働くことができます。


一方で、加齢による体力や集中力の低下は避けられず、業務継続が困難になるケースも。


社労士は、クライアント対応や書類業務において専門性や正確性が求められます。


持病や入院・通院を余儀なくされ、業務に支障をきたすことで廃業を選ぶケースが増えているのが現状です。


家庭の事情


家庭の事情も、社労士が廃業する理由の一つです。


親の介護や家族の病気、配偶者の転勤などにより業務に時間が割けなくなり、廃業を選ぶケースが増えています。


社会保険労務士2024年度版」によると、開業社労士は56.4%が1人体制で運営しており、代替人員がいないことがわかります。


代わりに業務を遂行する人員がいないことで、家庭の事情に直面した時に、廃業を検討せざるを得ないのが現状です。


収入の不安定さ・顧客の減少


廃業を検討する3つ目の理由は、収入の不安定さや顧客の減少です。


社労士として活動するうえで、安定した収入や顧客の確保は重要です。


しかし、昨今では新規参入者の増加や、クラウド労務管理ソフトの普及によって競争が激化しています。


クラウド労務管理ソフトが普及し手続きが容易になったことで、社労士に依頼するのではなく、企業が自ら手続きを行うケースが増えました。


その結果、顧問契約の単価下落、契約の打ち切りで収入が不安定になることも。


そんな社労士業界に追い討ちをかけたのが、コロナ禍による中小企業の倒産や縮小です。


帝国データバンクの『全国企業倒産集計 2021年報』によると、2021年の企業倒産件数は6,030件で、3年ぶりに前年を上回りました。


特に「小規模企業」(負債5,000万円未満)の倒産が全体の約66.6%(4,015件)を占めており、飲食業や宿泊業、建設業などを中心に多くの中小企業が経営難に直面していたことがわかります(同報告P5, P15より)。


このように、複数の要因が重なり顧客が減少したことで、廃業を検討する社労士が少なくないのが現状です。


時代の変化への対応が困難


4つ目の理由は、時代の変化への対応が困難であることです。


昨今は電子申請義務化、マイナポータル連携などのITやデジタル化が急速に普及しています。


効率化につながる一方で、高齢の社労士にとっては負担がかかる場合も。


加えて、労働・社会保険制度の改正頻度が高く、継続的なキャッチアップにも労力がかかります。


業務をこなしながら時代・法律の変化に対応し続けることは、容易ではありません。


対応に限界を感じ、廃業を検討するケースも相次いでいます。


後継者不在


5つ目の理由は、後継者の不在です。


家業として社労士事務所を運営しているケースは稀であるため、引き継ぐ親族や従業員がいないことは珍しくありません。


また、顧問先との信頼関係が必要な業務内容上、簡単に引き継ぎできるものでもありません。


このような後継者不在の事情から「引き継ぎできないのであれば、今辞めよう」と廃業を決断するケースもあります。


社会保険労務士が廃業までにやるべき4つのこと


社労士がスムーズに廃業するためには、計画的な準備が必要です。ここからは、一般的なタイムラインに沿って社労士がやるべきことを紹介します。


時期(目安)
やるべきこと
2〜3か月前廃業決意。顧問契約書など確認
1〜2か月前クライアントに通知、引き継ぎ先検討
1か月前書類整理・返却準備、社労士会や税務署への届出準備
廃業直前資産整理、保険・契約関係の終了手続き

ここからは、廃業決意〜廃業直前までに必要な対応について詳しく解説します。


クライアントへの廃業の通知と、その後の対応説明


最初のステップは、クライアントへの廃業通知です。


たとえば、顧問先への通知は以下のような文面にするとよいでしょう。


「突然のご連絡となり恐縮ですが、このたび健康上の理由により、〇月末をもって社会保険労務士業務を終了させていただくこととなりました。これまでのご厚情に深く感謝申し上げます。」

また、手紙に加えて電話での事前連絡や、感謝の言葉を添えたお菓子などを同封することで、より円滑なコミュニケーションとなるはず。


廃業の意向は、遅くとも1〜2ヶ月前に伝えましょう。


その際は、書面で正式に通知することが大切です。


長年にわたって付き合いのあるクライアントには、直接訪問や電話で説明するのが理想的と言えるでしょう。


契約内容に「解除条項」がある場合は、その通りに手続きを進めます。


顧問契約は民法643条にも、「相手方に委託し」とあるように、信頼関係を前提とする契約であり、誠意ある対応が求められます。


(委任)
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。引用元:民法643条

また、日本社労士会連合会の「社会保険労務士倫理綱領」にも「良心と強い責任感のもとに誠実に職務を遂行しなければならない」と記載があるため、社労士は、強い責任感のもと、最後までクライアントに誠実に対応することが大切です。


1 品位の保持
社会保険労務士は、品位を保持し、信用を重んじ、中立公正を旨とし、良心 と強い責任感のもとに誠実に職務を遂行しなければならない。引用元:日本社労士会連合会「社会保険労務士倫理綱領」

書類や業務データの整理


2つ目のステップは、書類や業務データの整理です。


もし、クライアントから下記などの原本書類を預かっていた場合には返却をしましょう。



  • 就業規則

  • 雇用契約書


また、書類ではなくPC内に賃金台帳などの業務データが保存されている場合もあるでしょう。


この業務データも、必要に応じてメディアで納品するか、消去証明を発行しましょう。


自身で保管している控え書類は、最低でも2年間保存しておくことをおすすめします。


保存しておくことで、廃業後に問い合わせがあった場合のトラブルを防ぐことが可能です。


各種届出


続いては、各書類の届出です。


提出先・提出書類は以下の通りです。


提出先
提出書類
都道府県社労士会登録取消申請書
税務署個人事業の廃業等届出書

まず、所属している都道府県社労士会へ「登録取消申請書」などを提出します。


この手続きを行うことで、厚生労働省の社会保険労務士名簿から削除されます。


加えて、廃業日から1ヶ月以内に、税務署にも「個人事業の廃業等届出書」を提出する必要があります。


提出期限が土・日曜日・祝日に当たる場合は、翌日が期限になるので注意しましょう。


廃業届に関する詳細は、国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」に記載されています。


各種保険などの契約解除手続き


最後に行うのは、各種保険の契約解除の手続きです。


加入していた士業賠償責任保険の解約、または契約終了後の補償範囲の確認を行いましょう。


廃業後も業務中のミスによる訴訟が起きる可能性があるため、確認を怠ってはいけません。


発生日基準や請求日基準は、契約内容によって異なる場合があるので特に注意が必要です。


損保会社の契約規定や約款に従って手続きを行いましょう。


また、事務所を賃貸していた場合は、原状回復義務にも注意が必要です。


経年劣化や通常損耗は含まれませんが、故意・過失による損耗や毀損がある場合は補修しなければなりません。


さらに、サブリクションやソフトウェアのライセンスの契約を整理し、不要なものは解約手続きを忘れず行いましょう。


社会保険労務士を廃業しようと思った時の5つの選択肢


「廃業」といっても、完全に引退する他にも、いくつかの選択肢があります。


クライアントとの関係性や、廃業後の活動を見据えて、以下表5つの選択肢から最適な道を選びましょう。


選択肢
登録の維持
実務の継続
クライアント対応
活動の自由度
引き継ぎ(M&A等)
△どちらでもOK△引き継ぎ時の条件次第○ 引き継ぎで対応○ 条件次第
段階的引退
○ 維持△ 一部のみ△ 限定的に対応○ 柔軟だが責任あり
登録維持のみ
○ 維持❌ しない❌ しない△ 登録義務あり
講師・顧問転身
○ 維持△ アドバイスなど限定的な業務のみ❌ しない◎ 知見を活かせる
廃業(完全引退)
❌ 登録取消❌ しない❌ しない◎ 完全自由

廃業後をしようと思った時のすべきことについて見ていきましょう。


信頼できる同業者に業務を引き継ぐ・M&Aする


1つ目は、廃業ではなく、信頼できる同業者に事務所ごと継承する方法です。


他者に譲渡することによって得た資金を、老後資金や再投資に活用できます。


また「クライアントに迷惑をかけたくない」「廃業後も信頼関係を維持したい」「スタッフや家族従業員の雇用を守りたい」という方におすすめなのは「事業継承型廃業」です。


事務所ごとではなく、顧客ごとに紹介して引き継ぐことができるため、クライアントへの影響を最小限に抑えられます。


事業継承型廃業のメリットは、以下のとおりです。



  • 無報酬の引き継ぎや解約手続きを回避できる

  • クライアントとの信頼関係を維持できる

  • 従業員が働き続けられる


事務所ごと継承するか、事業継承型廃業にするか、自身の希望に合った選択をしましょう。


業務の縮小・限定継続(段階的な引退)する


2つ目は、完全に廃業する前段階として、業務の縮小・限定的に継続する方法です。


顧問先を減らし、気力や体力に無理のない範囲で、一部業務のみ継続できます。


たとえば、顧問先を3件までに絞り、週10時間以内で業務を行うといった制限を設けることで、無理のない働き方が可能です。


また、報酬単価の見直しや対応範囲を明確にした契約書への変更も重要です。


業務範囲外の依頼が発生した場合でもトラブルを未然に防げます。


就業規則のレビューやアドバイスなどの業務に特化することも可能なので、肉体的にも精神的にも負担をかけずに働けます。


業務の縮小・限定継続は「いきなり引退するのは不安」「一定の収入を確保したい」「クライアントとの関係を保ちたい」と考える方におすすめの方法です。


ただし、報酬の見直しや稼働時間の制限を事前に決めておく必要があります。


クライアントとのトラブルを事前に防ぐためにも慎重に話し合い、合意の上活動しましょう。


社会保険労務士としての登録は維持しつつ、実務を休止(名義保持)


3つ目の方法は、実務を休止しつつ、社労士としての登録だけを維持する方法です。


社労士としての登録は維持しつつ、実務を休止する方法にすれば、実務をせずとも「社会保険労務士」という肩書を維持したまま活動できます。


ただし、実務を休止しているにもかかわらず「社会保険労務士」と肩書を使用する場合、名刺などの表示方法によっては誤解を与えるおそれがあるため、社労士会の倫理規程に沿って慎重に対応する必要があります。


名刺やプロフィールに「社会保険労務士」と引き続き記載できるため、講演や執筆などを考えている方や「将来的に再開する可能性がある」という方におすすめです。


ただし、社労士として登録を維持するにあたって、年会費の発生や研修への参加が義務づけられます。


登録上、社労士としての責任が問われる可能性もあるため、総合的に判断して決めましょう。


別の形で知見を活かす(講師・執筆・顧問など)


4つ目は、社労士としての活動を辞めた後も、これまでに培ってきた知見を別の形で活かす方法です。


労務の専門家として間接的に活動できるのは、以下のとおりです。



  • 資格予備校の講師

  • 企業研修・セミナー講師

  • メディアなどのコラムニスト(執筆)

  • 地方自治体の労務相談員・アドバイザーなど


このように、時間拘束が少なく、かつ体力的な負担も少ない仕事を続けられます。


社労士から引退後も、幅広く活動できるのが魅力です。


「士業業務は辞めたいけど知見を活かしたい」「社会貢献したい」「後進育成に携わりたい」という方は、選択肢の一つとして検討しましょう。


なお、別の形で知見を活かして活動する場合、前述のとおり社会保険労務士としての登録を残す必要があります。


廃業(完全に引退)する


5つ目は、業務から完全に退く「廃業」という方法です。


廃業は、家庭の事情や、高齢・病気・介護により継続が困難であるなど、さまざまな事情で復帰する見込みがない方に向いています。


クライアントの契約を終了し、労務上の責任から解放される点が特徴です。


廃業する際は、都道府県社労士会への登録取消を行い、社労士資格の使用を辞める正式な「廃業」手続きが必要になります。


クライアントや従業員はどうする?


「廃業したいけど、信頼関係のあるクライアントや一生懸命働く従業員のことを考えると躊躇してしまう」という方も多いのではないでしょうか。


しかし廃業は、クライアントや従業員を切り捨てることではありません。


クライアントと従業員の今後がどうしても気になり廃業に踏み切れない方は、信頼できる同業者に引き継ぐM&Aや事業継承がもっともおすすめの選択肢です。


社会保険労務士を廃業するなら、事務所そのものを引き継ぐ「M&A」や「事業承継」がおすすめ!


社会保険労務士事務所をクライアント・従業員ごとに引き継ぐM&Aや事業継承がおすすめなのは、以下のように考えている方です。



  • クライアントに迷惑をかけたくない

  • 従業員の生活が心配で廃業できない

  • 自分が退いても事務所を継承してほしい


社会保険労務士事務所ダブルブリッジなら、士業M&Aや事業継承の実績が豊富にあり、クライアントや従業員の受け入れも行なっています。


たとえ遠隔地であっても、在宅勤務での受け入れが可能です。


社会保険労務士事務所ダブルブリッジでは、職を失うことなく業務を継続できる環境が整っているため、従業員への責任を感じている方にとって安心材料になるでしょう。


「事業継承や売却時、従業員はどうなるの?」「引き継ぎの方法がわからない」「どのような選択肢があるのか詳しく知りたい」など、さまざまな不安や疑問があると思います。


そのような迷いがある場合は、士業M&Aの実績がある弊社に、ぜひ一度ご相談ください。


「廃業=終わり」ではありません。


クライアントや従業員、そしてあなた自身にとって最適な方法を、一緒に見つけましょう。


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