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2025年12月15日

給与計算の間違いが多い理由、防止方法や対応策を解説



給与計算は従業員の生活に直結する重要業務であり、ミスは決して許されるものではありません。

しかし現実には、中小企業を中心にアナログな勤怠管理・手計算の給与計算が多く、入力漏れや計算違いなどのミスが頻発しています。

主な原因は「勤怠データの間違い」「社会保険料率の改定漏れ」「給与計算方法の理解不足」などです。

また2025年の弥生株式会社の調査によれば、給与・勤怠・労務管理の課題として「計算・入力ミスや漏れ」を挙げた企業が最も多く26.1%に上っています。

とりわけExcelや手書きで管理している企業ではミスや属人化の問題が深刻で、7~8割もの企業が手作業ゆえの非効率やミスに悩んでいる状況です。

給与計算のミスは従業員の信頼を損ねるだけでなく、未払いがあれば法的リスク(労基法違反や遅延損害金)も伴います。

本記事では、なぜ給与計算ミスが起きるのか、その防止策や起きやすいタイミング、万一ミスした際の対応方法について、実務的なポイントを解説します。


給与計算のミスが多い理由



給与計算は、法律や勤務体系、社会保険制度など多くの要素が絡み合うものです。


少しの確認漏れでも誤りにつながります。


ミスの原因として、次が挙げられます。



  • 入力間違いのせい

  • 計算間違いのせい

  • 手当のルールが複雑だから

  • 雇用形態ごとに給与形態が違うから

  • チェック体制がないから


以下からは、現場で実際に多く見られる原因をそれぞれ具体的に解説します。


入力間違いのせい


もっとも典型的な原因が、手作業による入力ミス・転記ミスです。

アナログ管理では勤怠データをタイムカードや出勤簿から手で集計したり、給与計算シートに数値を転記したりする工程を避けることができません。


つまり、人為的な誤りが起こりがちです。

実際、給与計算を人手で行う場合に最も多いミスは勤怠の転記間違いともよくいわれます。

たとえばタイムカードの打刻時刻を読み間違えたり、残業時間を手計算で丸め直す際に計算違いをしたり、ネットバンキングへの給与振込データを一人ひとり入力する中で桁を誤ったり。


手作業が入り込む箇所でミスが起こるのです。

このような単純ミスを防ぐには、入力工程そのものを減らすかダブルチェックを徹底するしかありません。


属人的な確認には限界があります。


計算間違いのせい


給与計算そのものの計算ミスも多発します。

特に残業代や休日・深夜手当の計算間違いが典型例です。


割増賃金の率適用を誤ったり、1分単位の勤怠を正確に集計できていなかったりして、支給額を間違えるケースが後を絶ちません。

たとえば法定時間外労働の割増率(25%や50%)の適用ミス、深夜労働の時間帯の把握漏れ、端数処理の誤りなどが考えられます。

また日割計算の方法を誤るケースもあります。

途中入社や月途中退職の社員の給与日割計算で控除すべき手当を間違えたり、社会保険料の控除有無のルールを誤認すると、実際の支給額と法定控除額が合わなくなってしまいます(※月末在籍者に社会保険料がかかる原則を失念すると、計算ミスになる)。

このように給与計算には細かな規定が多いものです。


担当者が基本ルールを十分理解していないと、計算ミスに直結します。


手当のルールが複雑だから


各種手当や控除のルールが煩雑であることもミスを誘発します。

給与には基本給のほか役職手当、資格手当、通勤手当、家族手当など様々な支給項目があり、従業員一人ひとりで金額や支給条件が異なります。

扶養家族の増減や住所変更による通勤手当の見直しなど、従業員データの変動に応じて手当額を更新していかねばなりません。

ところが人事情報の連絡漏れや管理ミスで手当の反映を失念すると、支給漏れ・誤支給が起こります。

実際に、退職者への手当を誤って支給し続けたり、逆に支給対象の手当計上漏れを起こした例も散見されます。

また給与計算上は昇給・降給や頻繁な手当額変更に伴い社会保険料の等級変更手続き(月額変更届)も必要です。


月額変更届の提出を忘れたり、新しい保険料率への控除額変更を忘れるミスも起こりがちです。

手当や控除のルールは会社ごとに複雑で、変更が多いほどチェックが追いつかずエラーが起こりやすくなります。


雇用形態ごとに給与形態が違うから


社員の雇用形態・勤務形態が多様だと、給与計算も煩雑になります。

正社員とパートタイマー、月給制と日給制、フレックスタイム制やシフト制など、職種や雇用区分に応じて勤務時間管理や賃金計算ルールが異なるケースでは注意が必要です。

たとえばフレックスタイム制ではコアタイムの遅刻控除ルール、短時間正社員では所定外労働の割増起算点など、個別に定めた社内ルールがあります。

こうした社内規程の細かいルールをシステムに正しく設定できていなかったり、担当者が把握しきれなかったりすると、計算結果にズレが起こります。

現に「給与システムを入れたらかえって複雑になり、最終的にExcelで手修正している」「設定が複雑すぎてエラーだらけ」といった声もあるほどです。

高機能な給与システムでも設定を間違えれば「計算ミス製造機」になってしまうため、雇用形態ごとの賃金ルールを正確に理解し運用しないとミスの原因になります。


チェック体制がないから


社内のチェック体制不足もミス多発の一因です。

多くの中小企業では給与計算を経理担当者ひとりに任せきりで、計算結果を別の人が検証する体制がありません。

機密性の高い給与情報ゆえに他の社員が関与しにくい事情もありますが、その結果「誰にも相談できず独自のやり方で処理し、ミスに気付かないまま…」というケースがよく見られます。

実際、給与計算を自社で行っている企業の9割で何らかの間違いがあるという見方もあるほどです。

ダブルチェックや第三者のレビューがないと、単純な入力ミスはもちろん、担当者の知識不足による計算誤りにも気付けずミスが放置されるリスクが高まります。

こうしたチェック漏れを防ぐには、後述するようにチェックリストの整備や複数人での確認体制づくりが不可欠です。


給与計算ミス防止のために必要な仕組み



給与計算の精度を高めるには、人の注意力ではなく次のように「仕組み」で支えることが重要です。



  • 勤怠データ自動連携

  • 勤怠承認フロー設置

  • 保険料・税率の自動更新

  • 支給・控除項目を一覧チェック

  • 二重チェック体制


社会保険労務士事務所ダブルブリッジでは、実務経験をもとに現場に合わせた給与管理体制づくりをサポートしています。


ここからは、実務で使える具体策をわかりやすく整理していきます。


勤怠データ自動連携


給与計算ミスを防ぐ第一歩は、勤怠管理と給与計算をシステム連携させることです。

タイムカード集計や残業時間算出を人手に頼っていると、それだけでスケジュールを圧迫しヒューマンエラーも起きやすくなります。

そこで、クラウド勤怠システムや打刻アプリなどを導入し、出勤簿のデータをそのまま給与計算ソフトに取り込める仕組みを構築しましょう。

勤怠システム上で就業規則に沿った集計ルールを設定しておけば、打刻漏れや二重打刻などもアラートで検知でき、短時間で正確に勤怠集計が可能です。

勤怠数字の転記そのものをなくし、入力ミスを根本的に削減できるというわけです。

社会保険労務士事務所ダブルブリッジでは、お客様に勤怠管理システム(例:ICカード打刻やWeb打刻のシステム)の導入を提案し、労働時間データを給与計算と自動連携させる仕組みづくりからサポートしています。

システム連携によって給与計算担当者の作業負担は大幅に軽減し、チェックにも余裕が生まれます。


勤怠承認フロー設置


勤怠データの正確性を担保するには、勤怠の承認フローを整備することも重要です。

各従業員が申請した勤務実績(残業申請や有給取得など)を上長が毎月確認・承認する仕組みを導入すれば、入力ミスや不正な自己申告の抑止につながります。

承認フローを経て確定した勤怠データのみを給与計算に使うことで、後から「申請漏れで残業代が払われていなかった」「打刻ミスに気付かず欠勤控除してしまった」といった事故を防止できるのです。

最近の勤怠管理システムにはワークフロー機能が搭載されており、従業員→上長の電子承認をスムーズに行えるようになっています。

たとえばジョブカン勤怠管理では、打刻漏れや申請漏れがあると管理者にアラート通知されるため、締め前に修正対応が可能です。

このように承認プロセスを設け二重のチェックを行うことで、勤怠による給与計算ミスを未然に防げます。


保険料・税率の自動更新


給与計算には社会保険料や税金の控除計算が付きものですが、こうした法定料率の改定に対応できていないことがミスの大きな原因になります。

社会保険料率(健康保険・介護保険など)は毎年見直されますし、雇用保険料率も法改正で変わることがあります。

たとえば雇用保険料は2022年度に引き下げられ、その後2023年度に再引き上げされました。

また介護保険料は40歳到達時から徴収開始、65歳到達で給与からの徴収終了など年齢に伴う変更点もあります。

こうした最新の料率や税制改正情報を常に把握し計算に反映させなければならないわけです。

具体的には、クラウド型の給与計算ソフトを利用することが対策。


法改正に応じて保険料率や源泉徴収税額表が自動更新されます。

また年次処理である住民税の切替(6月)や年末調整の控除項目もソフト上で最新の計算式が適用されるため、担当者が手動で変更し忘れるリスクを減らせます。

毎年の制度改正直後は特に注意が必要となるため、自社で対応が難しければ社労士など専門家に確認するのがおすすめです。


ぜひ、労働・社会保険制度に精通した社会保険労務士事務所ダブルブリッジにご相談ください。


制度更新やシステム設定の見直しをサポートします。


支給・控除項目を一覧チェック


ミス防止にはチェックリストの活用も欠かせません。

給与計算時には毎月、基本給や時間外手当、各種手当、社会保険料や税金など多岐にわたる項目を計算しています。

これら支給・控除項目について、漏れや誤りがないか一覧でチェックする仕組みを作りましょう。

たとえば「〇〇手当の支給対象者に漏れはないか」「扶養家族の増減に応じた所得税控除額は正しいか」「住民税の年度更新額を反映したか」等、確認ポイントを書き出したチェックリストを用意するなど。

リストに沿って毎月の計算結果を点検すれば、担当者自身による見落とし防止に役立ちます。

特に人事異動や扶養変更があった際には、就業規則・賃金規程に定めた支給条件と照らし合わせて適用漏れがないか入念に確認しましょう。

また日割計算が発生する場合は控除すべき手当の扱いに注意が必要なため、チェックリストに「日割対象外の手当確認」など項目を追加しておくと安心です。

一覧チェックで自社の給与計算ルールを見える化し、ミスの芽を摘み取ります。


二重チェック体制


人的ミスを完全になくすには、複数人によるチェック体制を築くのが理想です。

小規模事業場では経理担当者が一人という場合も多いものです。


可能であれば、別のスタッフや上司が給与計算結果を確認できる仕組みを導入しましょう。

実際「ひとり経理」が常態の中小企業では、社長が最終チェックを行うだけでも抑止効果があります。

社内で人員を割くのが難しければ、顧問社労士に計算結果をダブルチェックしてもらう方法もあります。

ポイントは、社内で完結させず客観的な目を入れることです。

計算ロジックや金額を第三者が検証すれば、担当者だけでは気付きにくいミスも発見できます。

また担当者が急病や退職の場合でも、複数人体制なら業務が止まらず安心です。

社会保険労務士事務所ダブルブリッジでは、給与計算担当者が退職・休職してもアウトソーシングしていれば引き継ぎの心配なく業務を継続できると考えます。

このように組織的なチェック体制を整えることが、長期的に見て給与計算ミス防止の最大のカギとなります。


給与計算の間違いが多いタイミング



給与計算のトラブルは、次のようにある特定の時期や条件が重なったときに集中して起こります。



  • 年度切り替え時

  • 法改正直後

  • 新入社員・退職者が多い月

  • 一時金・賞与を支給する月

  • 勤怠締め日・支給日が近いとき

  • 給与システムの初期利用時


ここでは、現場で特にミスが増えやすい状況を見ていきましょう。


年度切り替え時


年度の切り替わり(主に毎年4月頃)は、給与計算ミスが増えるタイミングです。

年度更新に伴い、社会保険料率の変更や税制改正が行われがち。


変更改正についていけないと、計算誤りに直結します。

たとえば、毎年3月に全国健康保険協会管掌の健康保険料率見直しが行われます。

給与担当者が古い料率のまま計算してしまうと、控除額を誤る原因になります。

また人事制度上も4月に昇給やベースアップを実施する企業が多く、反映漏れにも注意が必要です。

昇給によって標準報酬月額が2等級以上変動する場合は月額変更届の提出が必要ですが、年1回程度の手続きのため失念しやすい傾向があります。

このように新年度の開始時は複数の変更が重なるため、平時以上に入念な確認が求められます。


法改正直後


社会保険や労働法規の法改正直後も要注意です。

近年では2023年4月、中小企業にも月60時間超の残業割増率50%適用が義務化されました。

このように制度が変わった直後は、その内容を正しく理解して給与計算に反映しなければなりません。

改正点の周知が徹底していないと、本来支払うべき割増賃金を不足払いしてしまう等のミスが起こり得ます。

法律や制度の改正は年数回起こり、タイミングもバラバラです。

たとえば雇用保険料率は年度途中で変更される場合もあり、住民税非課税範囲の拡大など税制改正も随時あります。

法改正情報を常にアップデートし、計算方法を適宜見直す体制がない企業では、改正後しばらく計算間違いが続いてしまうケースもあります。

社内で対応が難しい場合は、社労士等から改正事項のアドバイスを受けるといった対策も必要です。


新入社員・退職者が多い月


4~5月や年度末など、新入社員の入社や退職者の発生が多い時期もミスが増えがちです。

新しく社員が多数入れば、その月の給与計算で各人の支給額を初めて計算します。

入社日が月途中であれば日割計算が必要となり、控除対象外の手当の扱いや社会保険料の徴収開始タイミング(入社月に社会保険加入したか否か)などの判断が必要です。

一方、退職者が多い時期も最終給与の計算で注意点が増えます。

退職月は有休消化や欠勤控除の調整、社会保険料の徴収有無(退職日が月末か否か)、住民税の残月分精算など確認事項が複雑です。

特に退職後に未払い賃金が残ると年14.6%の遅延利息が発生するため、計算漏れは大きなリスクになります。

人の出入りが多い繁忙期は担当者も業務負荷が増すため、普段以上に慎重なチェック体制を敷く必要があります。

入社・退職の手続きに追われて給与計算が後回しにならないよう、余裕をもったスケジュール管理を心がけましょう。


一時金・賞与を支給する月


ボーナス(賞与)や決算手当など一時金の支給月も、給与計算ミスが起きやすいタイミングです。

賞与は通常の月次給与と計算方法や税金の扱いが異なるため、経験が浅い担当者だと戸惑うことがあります。

たとえば賞与所得税は、前月の給与や扶養数に応じた専用の税額表で算出する必要があります。


しかしながら、誤って通常の計算式で計算してしまうミスが見受けられます。

また賞与支給時には社会保険の月額算定には含めず別途「賞与支払届」を出します。


失念すると、社会保険料の支払いに影響してしまいます。



賞与支給月は通常業務に加えて支給額計算や明細作成の作業が増えるため、担当者の負荷が高まりヒューマンエラーが起こりやすくなります。

賞与計算は年に数回しかないぶん事前準備が肝心で、計算手順のマニュアル化や過去データの検証をして臨むことが重要です。


勤怠締め日・支給日が近いとき


給与の勤怠締日と支給日が近すぎる場合もミスが起こりやすくなります。

中小企業では「毎月15日締め当月25日支給」「月末締め翌月10日支給」等、締日から支給日まで10日程度しかないケースが少なくありません。

締日翌日から給与計算を開始しても、土日祝日が間に入れば実質作業日数はさらに短縮されます。

実際のカレンダーを見ると、たとえば9月なら15日締め25日払いの場合、16日(敬老の日)・21~23日(週末+祝日)と休日が重なり、振込手続き期限(支給日3営業日前)は19日までとなります。

つまり締日後わずか2~3営業日以内に勤怠データを確定させ、給与計算から振込処理まで完了しなければなりません。

このように時間的余裕がないと、確認漏れや入力ミスを修正する暇もなく支給日を迎えてしまう恐れがあります。

結果として小さな計算違いが見逃されたまま給与支給されてしまうケースもあります。

対策としては、締日と支給日のスケジュールそのものを見直すことも検討すべきです。

締日から支給日まで最低でも2週間程度は確保するとともに、給与計算期間中に休日が多い月は事前に前倒しで準備を進めるなどの運用工夫が必要です。


給与システムの初期利用時


新しく給与計算システムを導入した直後も、思わぬミスが起こりがちです。

システム導入当初は設定や操作に不慣れなため、「自動計算された結果を信用したら実は設定ミスで誤計算だった」「複雑な社内ルールをシステムが再現できず手動での修正が起こった」といった混乱が起こることがあります。

給与システムは勤怠データや各種手当の計算をボタン一つで行える便利なツールですが、その前提となる設定を正しく行わなければかえって混乱を招く点に注意が必要です。

典型例は、変形労働時間制の残業計算ロジックを設定し損ねて残業代計算に誤差が出る、といったケース。


ほかにも、賃金規程上の皆勤手当の控除条件をシステムに反映し忘れて本来控除不要なケースで控除してしまった、固定残業代の設定を誤り法定割増との差額精算が適切に行われない、などが挙げられます。

このように高機能なシステムでも設定を誤れば「計算ミス製造機」になりかねないため、導入初期は特に注意深く動作検証を行いましょう。

過去の手計算結果とシステム計算結果を突き合わせて検証し、必要に応じて設定修正や社内ルールの見直しを行うことが大切です。


複雑な給与計算システムの導入や設定を正確に行いたい場合は、労務管理と給与業務の両面に精通した社会保険労務士事務所ダブルブリッジへご相談ください。


専門知識に基づいた導入支援と設定点検で、ミスのない給与運用を実現いたします。


給与計算ミスがあったときの対応方法



給与計算で誤りが発覚した際は、次のようにスピード感を持った誠実な対応が信頼回復の鍵になります。



  • ミスの内容・影響範囲を把握する

  • 対象従業員に説明(謝罪)する

  • 正しく精算する

  • 修正処理の記録を残す

  • 再発防止する


感情的な反応よりも、正確な事実整理と迅速な修正を優先することが重要です。


ここからは、実務で行うべき具体的な手順を順に見ていきましょう。


ミスの内容・影響範囲を把握する


万一給与計算ミスが起きてしまったら、まずはミスの内容と影響範囲を正確に把握しましょう。

どの従業員のどの項目にどの程度の誤りがあったのか、原因は何か、他の従業員にも波及していないかを調査しましょう。

たとえば残業代の計算式ミスなら全員に影響する可能性があり、特定社員の手当入力漏れならその方だけの問題かもしれません。

原因究明と影響範囲の特定を迅速に行い、社内で共有した上で今後の対応方針を決めてください。


対象従業員に説明(謝罪)する


次に、対象となる従業員への速やかな説明と謝罪が肝心です。

給与計算ミスに気付いた時点で、できるだけ早く本人に事実を伝え誠心誠意お詫びしましょう。

対処が完了してから報告すると「隠していた」と受け取られ不信感を招く恐れがあるため、発覚した段階ですぐ謝罪することが大切だとされています。

その際、「○月○日の残業代が計上漏れだった」など具体的に誤りのあった箇所を明示し、差額をどのように精算するかなど今後の対応策もセットで説明します。

ミスの原因についても可能な範囲で伝え、社員の不安を取り除くよう努めましょう。

たとえば「システムの設定ミスが原因なので再発防止策として設定を見直しました」など、改善策や再発防止策も誠実に伝えるべき。

重要なのは、決して隠蔽や言い訳をせず会社として真摯に非を認める姿勢です。

そうした対応が従業員との信頼維持には不可欠です。


正しく精算する


次に、不足分・過払い分を正しく精算しましょう。

支給漏れがあった場合はできる限り当月中に追加支給し、不足額を埋め合わせてください。

給与支給日は法律で定められた支払期日でもあるため、本来その期日までに支払われるべき賃金が未払いだった場合は、給与支給日の翌日以降の支給になると遅延利息(年3%)が発生する可能性があります。

間に合わない場合でも次回給与日には必ず差額を支給し、所定の遅延損害金を上乗せするなど法令に則った精算を行います。

逆に誤って払い過ぎてしまったケース(過払い)の場合は、その分を従業員と相談の上で回収します。

基本的に給与の控除は労使協定が必要なため、たとえば翌月給与で過払い分を相殺する場合には本人の同意書を取るなど適切な手続きを踏みます。

金額が大きい場合は分割での返還交渉や賞与で調整するケースもあります。

いずれにせよ、会社側のミスである以上は丁寧に事情を説明して理解を得ながら、過不足の精算を迅速に完了させましょう。


修正処理の記録を残す


給与計算ミスが起こった場合、修正処理の記録をきちんと残すことも大切です。

誤りに気付いたら、まずは誤った給与明細を正しい内容に訂正し差し替えましょう。

修正後の給与明細書や計算シートは、そのコピーを給与ファイルに保管し、いつ・誰が・何を訂正したか分かるようにしておいてください。

特に基本給や手当の修正は源泉所得税や雇用保険料額にも影響するため、訂正内容を関係各所(経理部門や税理士等)にも共有しましょう。

社会保険料の計算誤りがあれば年末調整の所得税計算にも影響するため、年末までに訂正が間に合わない場合は別途修正申告の対応が必要です。

こうした修正履歴を残すことで、後から監査や従業員からの問い合わせがあった際にも適切に説明でき、社内の教訓としても活かせます。

再発防止策の検討材料とするためにも、「○○の控除額に誤り→△月△日に○○円を追加支給、明細訂正済み」といった記録を社内文書(給与台帳等)に残しましょう。


再発防止する


再発防止策を考え、実行することが何より重要です。

給与計算ミスが起こったら、その場しのぎの対処で終わらせず、なぜ起きたのか原因を分析し根本から改善する姿勢が欠かせません。

原因に応じた防止策の例は、次の段落の表をご覧ください。

たとえば「担当者の確認漏れ」が原因ならダブルチェック体制を敷く、「手作業の集計」が原因なら勤怠管理をシステム化する、といった具合に具体的な施策を検討します。

必要に応じて担当者への追加研修を行ったり、業務フローそのものを見直したり、場合によっては社労士への外部委託も視野に入れましょう。

ミスが起こらない仕組みを作ることこそが従業員との信頼関係を築き会社の持続的成長を支える土台となります。

正確な給与計算は企業の誠実さの表れでもあるため、再発防止策を徹底して「ミスの起きない給与計算体制」へ改善しましょう。


静岡市の社会保険労務士事務所ダブルブリッジでは、企業の規模や現場実態に合わせた給与運用ルールやチェック体制の構築を支援しています。


給与計算ミスの再発防止策



給与計算ミスをしてしまった場合の再発防止方法は、次の表のとおりです。


ミスの原因・状況再発防止策・対応
手作業による勤怠データの転記ミスが起きた・勤怠管理システムと給与ソフトを連携し、打刻データの自動取込みで入力工程を削減する・手計算部分を極力なくし、集計をシステム化してヒューマンエラーを防止
社会保険料率や税額表の更新漏れが原因となった・クラウド給与計算ソフトを導入して法定控除の料率を自動更新し、最新の法改正に常に対応できるようにする・担当者自身も厚労省通知等をチェックし、改定月を把握しておく
社内の給与体系・勤怠ルールが複雑で設定ミスが起きた・社内規程や賃金体系を見直し、システム設定とズレがないようにする・特殊な計算が多い場合は規程を簡素化できないか検討し、制度変更が難しければ設定マニュアルを整備して対応漏れを防ぐ
支給・控除の計算漏れ・適用誤りがあった・支給項目・控除項目のチェックリストを作成し、毎月担当者自身で点検&証跡を残す・可能であれば上長や別担当者が二重チェックを行い、手当計上漏れや控除ミスを早期発見する
担当者ひとりに依存し確認漏れが起きた・複数人によるチェック体制を構築する・社長や他の経理担当者が最終確認するフローに変えるか、外部の社労士にスポットで監査を依頼するなどして、主観に陥らないダブルチェックを実施
締め日~支給日の期間が短くミスを訂正できない・給与締日・支給日のスケジュールを見直す。締日を前倒しする、支給日を遅らせるなどして計算期間に余裕を持たせる・難しい場合は繁忙月は人員を増やす・事前準備を早めるなど運用面で調整する
担当者の知識不足・経験不足でミスが起きた・担当者研修や専門家への相談で知識を補強する・給与計算の基礎ルールや最新の改正点について定期的に勉強会を行い、業務に反映させる・社労士等専門家のチェックを受けフィードバックをもらう



原因・状況に合わせた対応をぜひ考えてみてください。


給与計算は外部化がおすすめ!ミスをゼロにして安心できる職場をつくろう!



給与計算ミスを防ぐには、専門家に外部委託するという方法があります。


社会保険労務士事務所に依頼すれば、最新の法令に基づいた正確な計算とチェック体制が整い、ミスのリスクを減らせます。


アウトソーシングのメリットは、事務処理が迅速で本業に集中でき、従業員に信頼される給与を支払える点です。


また、給与計算の専門家に任せることで、コスト削減や担当者の退職リスクにも対応できます。



私たち社会保険労務士事務所ダブルブリッジも、勤怠システム導入提案から給与計算・明細作成までトータルサポートしています。

社会保険労務士4名を含む9名体制で幅広い労務業務に対応可能です。

また社会保険労務士事務所としてプライバシーマークを取得し万全のセキュリティ体制の下、顧客の個人情報を保護しているため情報漏洩の心配もありません。

これまでにも「マイルールだらけの混沌とした中小企業の労務管理を適正化し、業績向上に繋げた」実績を多数持ち、信頼と専門性に定評があります。

給与計算のアウトソーシングはコスト削減も実現しやすく、担当者の退職リスクにも左右されずに業務を継続できる点も利点です。

何よりミスゼロの安心できる職場環境づくりができれば、従業員の満足度向上にも繋がります。

自社の給与計算ミスに不安をお持ちの経営者の方は、ぜひ専門家への委託を検討してみてください。


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