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2025年12月01日

勤怠管理を業務委託・代行・外注すべき企業は?注意点も含めて解説



アナログな方法で勤怠管理を行っていると、記録や集計に手間がかかり人為的ミスも発生しがちです。


従業員の労働時間を正確に管理することは企業のコンプライアンス上不可欠です。


しかし、法改正への対応や煩雑な集計作業は人事労務担当者に負担となっています。


そこで注目されているのが、勤怠管理業務の外部委託(アウトソーシング)です。


専門業者に勤怠管理を任せれば、担当者の負担軽減と業務の正確性向上が期待できます。


本記事では、勤怠管理を外部に委ねる際の契約形態の違いや具体的な業務範囲や注意点について解説します。


勤怠管理における業務委託・代行・外注の違い



勤怠業務を外部に任せる際は、主に次の3つの契約形態があります。



  • 業務委託

  • 代行

  • 外注


以下からは、それぞれの意味と特徴について詳しく見ていきましょう。


業務委託


業務委託とは、自社の業務プロセスの一部を外部に委ねる契約形態のことです。


勤怠管理における業務委託は、タイムカード打刻データの確認や集計といった勤怠業務を専門業者に任せる形態を指します。


ポイントは、最終的な責任は企業(委託者)側に残ることです。


勤怠データの最終チェックや法令遵守状況の監督は引き続き自社で行う必要があります。


外部に任せながらも自社の管理体制を保ちたい企業に適した契約形態です。


また、業務委託契約は法律上「委任契約」または「準委任契約」に該当するケースが多く、成果物の完成ではなく業務遂行自体に対して報酬が支払われます。


なお、実際の業務内容によっては「請負契約」や「派遣契約」に近い形となる場合もあるため、契約書上で業務範囲と責任区分を明確にしておくことが重要です。


代行


代行とは、外部業者が企業に代わって特定の業務を実際に遂行する形態です。


勤怠管理代行の場合、従業員の出退勤時刻や休暇、残業時間の記録・集計・管理を外部の専門業者が担当します。


具体的には、勤怠データのチェックや勤務予定の管理、不正打刻の有無の確認、時間外労働の適切性のチェックなどを行ってくれるサービスです。


社内担当者が行っていた手作業部分をほぼ丸ごと任せられるため、担当者の手間を大幅に削減できます。


代行業者は勤怠管理の専門知識を活かして人為的ミスを減らし、労働時間や賃金が適正かどうかのチェックまで対応してくれるため、担当者の単純作業を最小限にしつつ勤怠データの精度を高められます。


なお、「代行」という言葉自体は契約形態というよりサービス内容を表す用語であり、契約上は業務委託契約の一種として扱われます。


外注


外注とは、広い意味で自社の業務を外部の企業や個人に発注することを指す言葉です。


アウトソーシング(業務委託・代行を含む)全般を指す包括的な用語であり、勤怠管理に限らずさまざまな業務領域で使われます。


「外注」という言葉自体は契約形態を問わない広義の概念で、業務委託契約も外注の際に締結する契約形態のひとつという位置付けです。


つまり、「外注する」と言った場合、その具体的な契約形態が業務委託(委任・準委任)なのか請負なのかといった違いがあります。


勤怠管理の文脈では、外注=アウトソーシングと捉えて差し支えなく、委託や代行を含め社外に勤怠業務を任せること全般を指す用語と考えましょう。


勤怠管理を業務委託する目的



勤怠管理業務を外部に任せる目的は、社内担当者の負担軽減と勤怠データ管理の正確性・安定性を高めることです。


専門業者へ委託することで、煩雑な集計作業や法改正対応などに追われていた人事担当者の業務量を大幅に減らし、注力すべき本来業務に時間を充てられるようになります。


また、プロのチェックによって勤怠データの正確性が担保され、人為的ミスの減少や属人化の解消につながります。


重要なのは、法改正や従業員数の増加にも柔軟に対応できる体制を構築し、労務リスクの少ない安定した勤怠管理を実現することです。


頻繁な労働法改正に対しても、委託先が最新情報に基づき迅速に制度を更新してくれるため、社内で情報収集・設定変更する手間を省けます。


このように、勤怠管理の外部委託は単なるコスト削減策ではなく、業務品質の向上とリスク軽減を両立させる戦略的な取り組みといえます。


勤怠管理を業務委託するメリット



外部委託には、実務効率と品質の両面でさまざまなメリットがあります。

具体的なメリットは次のとおりです。



  • 集計精度を高められる

  • 処理スピードが上がる

  • 拠点ごとの勤怠ルールをまとめて管理できる

  • 多様な雇用形態に対応できる

  • 法改正にスムーズに対応できる

  • 社内異動や退職時も品質を保てる

  • 引継ぎにかかる負担を減らせる


以上のポイントを押さえることで、勤怠管理のアウトソーシングがもたらす効率化と品質向上の効果を具体的に理解できます。

次から、それぞれのメリットについて順を追って解説していきます。


集計精度を高められる


専門業者に勤怠データの確認・修正を任せると、人為的ミスが減り勤怠集計の精度が向上します。


外部の勤怠管理代行サービスでは、タイムカードの打刻漏れやエラーデータの補正も含めて対応してくれるため、社内担当者だけでは見落としがちなミスもプロの目でチェックしてもらえます。


たとえば、「出退勤の打刻忘れがないか」「残業時間の計算に誤りがないか」といった点です。


また、多くのアウトソーシングサービスでは勤怠管理ソフトや自動集計システムを活用しているため、手作業による計算ミスも大幅に削減されます。


このように、外部委託によりダブルチェック体制とシステム自動化を取り入れることで、勤怠データの信頼性が飛躍的に高まります。


処理スピードが上がる


勤怠管理を外部に委託すると、月末締め処理や集計作業のスピードアップが期待できます。


専門業者は専用システムと熟練スタッフによって効率的に処理を行うため、社内で手作業していたときよりも迅速に勤怠データを確定できます。


特に給与計算と連動する月末月初の繁忙期でも、複数担当者による集中的な作業体制が組まれるため、残業時間の計算や各種手当の集計などもスムーズです。


結果的に、給与計算や帳票作成までの一連の流れが滞りなく進み、支給遅延などのリスクが減少します。


社内で時間のかかっていた勤怠締め作業が迅速化すると、人事担当者は他の重要業務に時間を充てられるようにもなるのです。


拠点ごとの勤怠ルールをまとめて管理できる


全国に複数の店舗や事業所がある企業では、拠点ごとに勤務体系や締め日、休暇制度など勤怠ルールが異なることも少なくありません。


勤怠管理の外部委託を利用すれば、そうした拠点別ルールを整理・統一し、一括管理することが可能です。


たとえば、「工場部門は〇日締め・営業部門は△日締め」「店舗Aはシフト制・店舗Bは固定勤務制」といったケースでも、委託先がルールの違いを吸収し、全社分の勤怠データを整理・統一して処理することができます。


そのため、人事部門は各拠点からバラバラに上がってくる勤怠集計表を手作業で取りまとめる必要がなくなります。


拠点横断的な勤怠ルールの標準化により、全社的に整合性の取れた勤怠管理が実現できる点もメリットです。


多様な雇用形態に対応できる


正社員・契約社員・パート・アルバイトなど、多様な雇用形態の従業員が混在している場合でも、アウトソーシングサービスならそれぞれに最適な勤怠処理に対応できます。


人材派遣会社を母体に持つアウトソーシング業者などは、アルバイト・パートの勤怠管理や給与計算のノウハウが豊富です。


時給制・日給制・月給制といった賃金形態の違いにも柔軟に対応できます。


たとえば、週単位の労働時間管理や残業の割増計算といった残業時間管理に欠かせない点も委託先がシステム上で設定し、正確に処理してくれます。


また、シフト制で勤務時間が日ごとに異なる従業員や、フレックスタイム制の従業員がいる場合でも、委託先が勤務区分ごとに適切な集計ルールを適用してくれるため、社内で個別対応する必要はありません。


雇用形態ごとの煩雑な勤怠管理を任せることで、安定した運用が可能です。


法改正にスムーズに対応できる


労働基準法や関連法令の改正があっても、アウトソーシングなら最新の制度変更にスムーズに対応できます。


勤怠管理の専門業者は法改正情報を常に収集・アップデートしており、自社システムの設定変更やルール改訂を迅速に行います。


そのため、企業側は逐一法改正内容の情報収集をしたり、システム設定を調整したりする必要はありません。


「時間外労働の上限規制」や「年5日の年休取得義務」など重要な法改正の際も、委託先が自動的に勤怠管理ルールへ反映してくれるためコンプライアンス違反のリスクを低減できます。


社会保険労務士事務所など有資格者が関与する業者であれば、改正内容の解説や自社への影響についてのアドバイスも受けられます。


法令遵守に万全を期すためにも、専門知識を持ったパートナーに任せることは有効です。


社内異動や退職時も品質を保てる


勤怠管理業務を外部に任せておけば、担当者が社内異動や退職で交代しても作業品質が維持できます。


社内で特定の担当者が勤怠処理を抱え込んでいると、その人が休職・退職した際に業務が滞るリスクがあります。


しかしアウトソーシングを利用していれば、委託先企業内で複数名のチームが業務を分担しているため、一人が抜けても他のスタッフが引き継いで処理の続行が可能です。


たとえば、中小企業で給与・勤怠計算を1名の担当者だけに依存していたケースでは、その担当者が急病で休んだだけで給与支払いが遅れる恐れがありました。


アウトソーシング導入後は、万一担当者の退職や長期休暇があっても外部のプロチームが滞りなく勤怠処理を継続し、同じ品質水準を保ってくれるため、従業員への給与支給に影響が出る心配がありません。


このように、属人化を防ぐと業務が滞ることなく安定した運用が可能であり、リスクの軽減ができることもメリットです。


引継ぎにかかる負担を減らせる


外部委託を活用すれば、社内担当者の交代に伴う業務引継ぎの負担も大幅に軽減できます。


通常、勤怠管理の担当者が替わる際には、引継ぎ資料の作成や後任者への教育に時間と手間がかかります。


しかし業務をアウトソーシングしていれば、日々の勤怠処理フロー自体は委託先が維持しているため、社内で詳細な引継ぎ作業をする必要がほとんどありません。


新任の人事担当者は委託先との窓口業務さえ把握すればよく、勤怠計算ロジックやシステム操作手順といった専門知識は不要です。


さらに、委託先との定例会議や報告ルールが確立されていれば、新任担当者も短時間で現状を把握できます。


結果として、人事異動や担当交代の際でも人事労務部門の業務が停滞せず、スムーズに体制移行できます。


業務委託の対象となる主な勤怠管理業務の範囲



勤怠管理のアウトソーシングで委託できる範囲は、主に給与計算前の勤怠データ整備が中心です。

具体的には、次のような業務が外部委託の対象となります。



  • 打刻データの確認・修正

  • 残業や休暇の管理

  • 勤怠集計データの作成

  • 勤怠システムの設定や運用サポート

  • 法改正時のルール更新


上記のとおり、日々の出退勤打刻から給与計算に渡す前段階までの一連の勤怠管理業務をまとめて任せることが可能です。

アウトソーシングの範囲をはっきり決めておくことで、委託後のミスや抜け漏れも防ぎやすくなります。

たとえば、勤怠データの入力・集計や有給休暇・残業時間の管理、勤怠システムの導入支援など幅広い業務が対応可能です。

企業のニーズに合わせて「ここからここまでを委託する」と事前に決め、契約で合意しておきましょう。


勤怠管理の業務委託の流れ



勤怠管理を外部に委託する際は、準備から運用開始まで段階的に進めることが大切です。

一般的な導入の流れは次のとおりです。


ステップ内容
1.現状フローと課題の整理・現在の勤怠管理フローや問題点を洗い出し、アウトソーシング導入の目的を明確にする ・現行システムの利用状況、従業員数や勤務形態、発生しているミス、残業集計の負担などを調査・整理し、どの業務を外部化すべきかを判断する
2.委託範囲と責任分担の明確化・外部に委託する業務範囲を決定し、自社と委託先の役割・責任を明確に定義する ・「打刻データ修正と残業管理は委託先が担当し、最終承認は自社が行う」といった形で、具体的な分担を取り決める ・また、緊急時の連絡方法や対応手順もこの段階で確認しておく
3.契約内容とSLA(サービス品質)の確認・委託内容が固まったら契約書を締結する ・契約書には業務範囲、成果物、検収(業務完了確認)の条件、責任の所在、トラブル発生時の対応手順、変更手続きや費用見直し条件などを明記する ・サービスレベル(SLA)として納期や精度の基準を設定し、再委託の可否や機密保持、個人情報保護に関する条項も盛り込む
4.システム連携と試運用の実施・委託先とのシステム連携を行い、自社システムとのデータ形式や転送方法の整合性を確認する ・必要に応じて設定変更やAPI連携を実施し、初回データ受け渡し時にはテスト期間を設けて小規模な試運用を行う ・1か月分程度の勤怠データを用いて結果を検証し、エラー発生時の再送手順を確立しておく
5.本稼働後の定期的な検証・外部委託を本格的に開始した後も、定期的に業務フローの検証と改善を行う ・毎月の締め処理後にKPI(納期遵守率やエラー件数など)を確認し、委託先との定例ミーティングで課題を共有する ・想定外の問題が発生していないかをチェックし、必要に応じて契約内容や運用ルールを見直すことで、アウトソーシングの効果を最大化できる


段階ごとに丁寧に進めることで、委託開始後のトラブルを防ぎ、スムーズな外部委託運用につなげることができます。


勤怠管理を業務委託するときの注意点



勤怠管理の外部委託を成功させるためには、次のように事前に押さえておくべき注意点があります。



  • 委託先の選び方

  • 契約内容の決め方

  • 法的責任

  • 情報管理

  • 災害やシステム障害への備え

  • システム連携のさせ方

  • 海外拠点や外国人従業員への対応

  • 委託後の維持・改善

  • 社内の統制


以下からは、それぞれの注意点について詳しく解説します。


委託先の選び方


勤怠管理業務を任せる委託先を選ぶ際は、価格も大事ですが、信頼性と専門性を重視することが大切です。

具体的には次のポイントを確認しておきましょう。


確認項目内容
社労士が関与しており、労務知識が確かか・勤怠管理には労働法規の知識が欠かせない ・社会保険労務士(社労士)の資格者が在籍している事務所、または正式に提携しているサービスを選ぶことが重要 ・社労士資格のない業者に社会保険手続き代行などの違法業務を依頼すると、企業側も処罰対象となるおそれがある
自社システムとの連携が可能か・自社の勤怠管理システムや給与計算システムとのデータ連携がスムーズにできるかを確認する ・委託先が自社システムに対応できず、手作業でデータをやり取りするようでは効率化の効果が下がる ・システム設定やデータ移行に強い業者であれば、複雑な就業規則にも対応した初期設定や運用サポートを受けられる
セキュリティ体制や個人情報保護の仕組みは万全か・勤怠データには氏名や勤務記録などの個人情報が含まれるため、情報セキュリティの水準が高い委託先を選ぶ必要がある ・データ暗号化、アクセス権限管理、監査ログ記録などの安全管理措置が十分かを確認する ・具体的には、プライバシーマーク(Pマーク)やISO27001の認証取得状況、データセンターの堅牢性、内部不正防止策などがチェック項目となる
障害や緊急時に迅速な対応ができる体制か・システム障害や災害発生時でも業務を止めないために、委託先のBCP(事業継続計画)体制を確認しておく ・トラブル時の連絡手順や復旧対応のスピードを事前に確認し、契約書にも明記しておくと安心 ・柔軟なスタッフ増員や予備システムへの切り替え体制がある業者であれば、非常時にも安定した運用が期待できる


こうしたポイントを総合的に判断し、実績豊富で信頼できるアウトソーシングパートナーを選定しましょう。


契約内容の決め方


委託契約を結ぶ段階で曖昧な点を残すと、運用後のトラブルに直結しかねません。

契約書では、次の事項を明確に定めておくことが重要です。


確認項目内容
業務範囲・成果物と検収条件の明記・委託する勤怠管理業務の範囲を具体的に列挙し、どこまでを委託先が行い、どこからを自社で対応するかを明確にする ・勤怠データ集計、残業超過チェック、有給管理レポート作成などを具体的に記載し、納品物や成果物がある場合はその仕様・形式・品質基準も定義しておく ・検収(業務完了確認)の条件を定めることで、認識のずれによるトラブルを防げる
再委託の可否と責任の所在の定義・委託先が業務の一部を別業者に再委託する場合の可否を明文化する ・無断再委託の禁止や、再委託先で事故が発生した場合の責任範囲を契約書に明記する ・契約形態と依頼内容を明示し、トラブル時に誰がどのように対処するか、責任を誰が負うのかを明確にしておくことが重要
トラブル発生時の対応手順・勤怠データの誤りや情報漏えいなどが発生した場合の報告・対処フローを定める ・「即日中に自社へ連絡し、是正策を協議する」「原因分析レポートを提出する」といった対応手順を契約書に記載し、責任の所在と対応期限を明確にする ・通知義務や損害補填の範囲も取り決めておくことで、緊急時にも冷静に対応できる
変更手続きや費用再算定の条件・委託内容の変更や追加要求が生じた場合の手続きを定める ・業務範囲拡大時の追加費用計算方法、人件費相場の変動に伴う見直し条件などを契約書に盛り込み、双方が合意の上で柔軟に契約内容を調整できるようにする
その他の重要事項・機密保持契約(NDA)の締結、契約期間と更新・解除条件、損害賠償範囲、免責事項などの重要項目を明記する ・特に金銭面や納期に関わる事項は事前に細かく合意しておかないと、後々の紛争につながるおそれがある

契約書を明確かつ詳細に作成することが、トラブルを未然に防ぐ最善策です。

業務委託契約の雛形を利用する場合も、自社のケースに合わせて必要事項を追加・修正し、双方が内容に合意した上で締結しましょう。


法的責任


勤怠業務を外部に任せても、最終的な法的責任は会社側(委託元)に残ります。

委託したからといってすべてを任せきりにせず、アウトソーシング後も自社でのチェック体制を維持することが必要です。


勤怠データの最終確認は必ず社内で実施しましょう。

たとえ外部業者が集計・修正したデータであっても、最終的に給与計算や労働時間の管理を行うのは企業自身です。

労働基準法違反(残業時間超過や適正な休憩付与など)の監督責任も企業にあるため、36協定の遵守状況やサービス残業の発生有無などは社内でチェックし続けることが重要です。


また、労働基準監督署など行政対応や是正勧告への対応は会社が主体となって行う義務があります。

万一、勤怠管理に起因するトラブルで行政から調査や指導が入った場合、アウトソーシング先が代わりに責任を負ってくれるわけではありません。

日頃から委託先との報告・連絡体制を密にし、必要な情報は速やかに入手できるようにしましょう。


情報管理


勤怠データには従業員の氏名や勤務時間、休日取得状況など個人情報が多く含まれます。

外部委託に際しては、そうした情報の取り扱いについて万全の管理体制を敷くことが求められます。

情報漏えいを防ぐため、委託先のセキュリティ水準や個人情報保護の対策を必ず確認しましょう。

特に以下の点に注意が必要です。



  • データの保管や送信は暗号化されているか

  • アクセス権限が限定されているか

  • 操作ログを記録し不正操作を防止しているか


こうした点に加え、情報管理上特に重要な次の2点についても注意してください。



  • 個人情報の扱い

  • マイナンバーの扱い


以下から、それぞれ詳しく解説します。


個人情報の扱い


勤怠データのような個人情報を外部委託する場合、個人情報保護法に基づいた体制構築が不可欠です。

自社と委託先の間で個人データの取扱契約を結び、適切な監督義務を果たさなければなりません。

以下のポイントを必ず確認し、契約内容に明記しましょう。


確認項目内容
データの取扱範囲と保管期間の明示・委託する個人データの内容・範囲を特定し、どの業務目的で利用するかを契約書に明記する ・委託先がデータを保管できる期間(例:「給与計算完了後○年間」)を設定し、期間経過後は速やかに削除する旨を取り決める ・目的外利用を禁止し、契約終了時にはデータをすべて返却または消去することも明文化しておく
情報漏えい時の報告体制・委託先で個人情報の漏えいや紛失が発生した場合に備え、報告義務と手順を契約で定める ・「○時間以内に委託元へ連絡し、原因と影響範囲を報告」「再発防止策を提出」など、対応内容を具体的に条項化しておくことで、緊急時にも迅速に事態を把握し対応できる体制を確保する
再委託時の監督体制・委託先がさらに外部に再委託する場合の条件を定める ・再委託には委託元の事前許諾が必要であること、再委託先にも同等の安全管理義務を課すことを契約書に明記する ・再委託先の情報開示や監査権限を確保し、無断再委託を禁止する旨と違反時の措置も取り決めておく

なお、委託先で個人情報漏えい事故が起きた場合、委託元も法的責任を問われる可能性があります。

したがって、委託先の安全管理措置を確認・契約で担保するとともに、契約後も定期的に委託先の取扱状況を監督すること(年次監査やチェックリスト提出など)も重要です。

適切な委託先の選定・契約締結・継続的な監督という一連のプロセスを経て、初めて個人情報の外部委託が安全に運用できます。


マイナンバーの扱い


従業員等のマイナンバー(個人番号)は特に厳重な管理が求められる個人情報です。

勤怠管理そのものでは扱わないものの、給与計算や社会保険手続き業務まで委託する場合はマイナンバー管理も委託先に任せるケースがあります。

マイナンバーを含む業務を外部委託する際には、番号法に則った取り扱いルールを契約書に明記しておく必要があります。

具体的には以下の点を確認しましょう。


確認項目内容
取扱担当者の限定・マイナンバーを取り扱う業務に従事できる委託先社員を特定し、担当者以外が番号データへアクセスできないようにする ・担当者の氏名や役職を契約書の別紙に記載し、交代が発生した場合には事前に通知を受けるよう取り決める ・委託先での身元確認や誓約制度が厳格に運用されているかも確認する
保管期間や削除方法の明示・マイナンバーは利用目的(年末調整や法定調書作成など)が達成された後、法定の保存期間経過後に廃棄する義務がある ・委託契約においても、保存期間と削除・廃棄方法(シュレッダーによる破砕、データ消去ツールによる完全消去など)を明確に定めておく
不要データの完全消去体制・委託先が不要となったマイナンバー記録を確実に削除・廃棄できる体制を整えているか確認する ・クラウドサービスを利用する場合は、バックアップに番号が残らないようにし、再委託先(クラウド事業者等)にも消去義務を課す条項を設ける ・また、契約終了時には委託先が保有するすべてのマイナンバー情報を確実に返却または消去させ、その実施報告を受ける旨を契約に明記する

マイナンバーの外部委託では法令遵守と万全な安全管理措置が取られていることが重要です。

仮にマイナンバーが漏えいした場合、委託元企業も含めて厳しい罰則や信用失墜につながります。

そのリスクを避けるためにも、契約段階で細心の注意を払い、委託後も委託先の管理状況をしっかり監督する必要があります。


災害やシステム障害への備え


地震や台風などの自然災害、停電や通信障害、あるいはシステムトラブルが発生しても勤怠処理を止めないために、委託先の事業継続計画(BCP)への対応状況を確認しておくことが重要です。

具体的には以下の点をチェックしましょう。


確認項目内容
定期的なバックアップと復旧テスト・委託先が勤怠データの定期バックアップを実施しているか、またバックアップデータからの復旧テストを定期的に行っているかを確認する ・データ消失に備えた体制を持つ業者であれば、災害発生時にも迅速にデータを復元し、業務を再開できる
代替拠点やクラウド環境での稼働・大規模災害で委託先のオフィスが被災した場合でも業務を継続できるよう、委託先が複数拠点やクラウド環境、在宅勤務体制を整備しているかを確認する ・他地域にバックアップセンターがあり、主要スタッフがリモートで勤怠処理を行える体制であれば、オフィスが使えなくなっても処理が中断することはない
緊急時の連絡手順と責任分担・災害や障害発生時の連絡手順と対応内容を契約書に明記しておく ・「システムがダウンした場合は電話連絡」「○時間以内に復旧見込みを報告」など、具体的な対応ルールを定める ・非常時の責任分担(どの範囲まで委託先が責任を負うか)も明確にし、曖昧さを残さないようにする

実際、アウトソーシングはリスク管理とBCP対策でも効果を発揮します。

災害時に外部リソースを活用してリスクを分散し、事業の継続性を高めることが可能だからです。

たとえば、大地震で自社オフィスが使用不能になっても、アウトソーシングサービス提供者が代替オフィスや在宅で業務を行えば、勤怠処理の中断を防げます。

こうした委託先の備えがあるかどうか、事前にしっかり確認しておきましょう。


システム連携のさせ方


勤怠管理アウトソーシングを円滑に機能させるには、委託先と自社のシステム連携が正しく行われることが前提です。

システム間でデータの齟齬や送受信ミスが起きないよう、導入前に以下をチェックしておきましょう。


確認項目内容
データ形式や転送方式の一致・自社の勤怠システムから出力するデータ形式(CSV、Excel、APIなど)と、委託先が受け入れ可能な形式が一致しているかを確認するフォーマットが異なる場合は、いずれかで変換対応するか、新たに開発するか検討する必要がある ・データ転送方法(オンラインアップロード、FTP送信、API連携など)についても両者で合意し、安全な経路で送受信する
APIなどの更新ポリシーの共有・システム連携にAPIを利用する場合、自社や委託先システムのアップデートでAPI仕様が変更される可能性がある ・お互いのシステム更新ポリシーやスケジュールを共有し、変更時には事前に通知し合うルールを定める ・APIバージョンアップ対応の漏れによるデータ不整合を防ぐための取り決めである
エラー発生時の再送ルール・データ送信時にネットワーク障害やフォーマットエラーが起きた場合の対応手順を定める ・「受信側でエラーを検知した場合は○時間以内に再送依頼」「当日中に再送がなければ電話で連絡」など、再送ルールを明確に決めておくことで、データ反映失敗時にも迅速にリカバリーできる
試験運用での検証・本番運用前にテスト環境または一部データで試験的なシステム連携を行い、正常に動作するか確認する ・実データを用いた数回分の送受信を通じて、文字化けや数値の丸め誤差、タイムゾーンのズレなどの問題を洗い出し、事前に解消しておく

システム連携は一度構築すればその後の運用効率を左右します。

委託先が勤怠管理システム提供会社であれば、就業規則に合わせた初期設定やデータ移行の専門支援を受けられるため、より安心です。

自社システムと委託先の仕組みがしっかり噛み合うよう、技術担当者同士で十分に擦り合わせておきましょう。


海外拠点や外国人従業員への対応


グローバルに事業を展開している企業や、外国人スタッフを雇用している場合には、勤怠管理の委託に際して地域ごとの制度や言語への対応力も考慮する必要があります。


以下の項目について、事前に確認しておきましょう。


確認項目内容
海外現地の勤怠制度・習慣への対応・海外支社や現地法人の勤怠管理を外部委託する場合は、その国特有の法定休日や勤務ルールに精通した業者を選ぶことが重要である ・国ごとに異なる祝祭日、時差調整、宗教上の休暇などに柔軟に対応できるかを確認する ・「日本本社と現地法人の勤怠データを統合管理できるか」「現地の労働法に準拠して処理できるか」といった点も委託先に確認する
多言語での操作や通知・勤怠管理システムの画面表示や通知メールなどが多言語対応しているかを確認する ・英語・中国語など必要な言語で従業員が打刻や申請を行え、管理者が各言語でレポートを参照できる仕組みがあると、外国人従業員にも負担のない運用が可能である ・委託先に多言語対応機能やサポート体制があるか確認する。
在留資格や労働制限への配慮・外国人労働者の在留資格によっては、労働時間や業務内容に制限がある場合がある ・たとえば、留学生アルバイトは週28時間以内、特定技能者は残業制限があるなどのケースである ・これらの制約を勤怠管理上で監視できるか、違反が発生しそうな場合にアラートを出せる仕組みがあるかを委託先に確認する
時差勤務や出張時の勤怠・海外出張や複数タイムゾーンの拠点勤務がある場合、打刻時刻の統一管理が課題となる ・委託先のシステムがタイムゾーンを考慮して記録処理を行うか、海外からのリモート打刻に対応しているかを確認する ・GPS打刻やモバイル打刻機能を備えたシステムであれば、出先でも正確な勤務記録が可能である

国・地域や従業員の国籍に応じたきめ細かな対応力を持つ委託先を選ぶことで、グローバルな勤怠管理も円滑に進められます。

自社の勤務体系の国際性に応じて、最適な外部パートナーを検討しましょう。


委託後の維持・改善


勤怠管理を外部委託した後も、「委託してよかったかどうか」を見極めるには、業務品質を保つための継続的な確認と改善が欠かせません。

アウトソーシング導入時の効果を持続・向上させるために、次のような取り組みを行いましょう。


確認項目内容
KPIの定期確認・委託業務に関する主要な指標(KPI)を設定し、定期的にモニタリングする ・「月次締め処理の納期遵守率」「修正依頼件数」「集計誤差ゼロの継続月数」などを設定し、毎月または四半期ごとに委託先から報告を受ける ・サービス品質が契約通り維持されているかを数値で把握できる
トラブル原因の分析と再発防止・ミスやトラブルが発生した場合は、原因を双方で分析し、再発防止策を講じる ・残業時間の計算誤りが発生した際に「就業規則の特殊ルール設定漏れ」が原因であれば、設定修正や二重チェックの導入など具体的な対策を実施する ・同じ誤りを防ぐため、PDCAサイクルを回して継続的に業務プロセスを改善していく
定期レビューとフィードバック・委託開始後は、契約内容や業務範囲、運用ルールを定期的に見直す ・事業環境の変化や社内ニーズの変化に応じて、「追加で委託できる業務の検討」や「報告頻度の調整」などを行う ・少なくとも年1回は委託先と品質評価ミーティングを実施し、双方でフィードバックを交換する ・半年に一度の振り返り会を設けて改善提案を行うことで、サービス品質を維持しつつ向上できる
最新技術やサービスの活用検討・アウトソーシング業界の進化に合わせて、最新の技術やサービスを取り入れる ・AIによる勤怠異常検知サービスや新しい勤怠管理ツールとの連携など、委託先からの提案や自社調査を通じて業務改善に活かす ・定期レビューの場で、委託先に業界動向や他社事例を共有してもらうのも有効である

委託後も「任せっきり」にせず能動的に関与することで、アウトソーシングの効果を長期的に維持できます。

継続的な改善姿勢が、長期的な効率化と品質向上につながるのです。


社内の統制


勤怠管理を外部に任せても、社内の監督・統制体制は維持する必要があります。

アウトソーシングによって業務実務は外部に移管されても、最終的な管理責任を負うのは自社であるため、以下のように内部統制をしっかり効かせておきましょう。


確認項目内容
承認フローの二段階化・勤怠データや残業申請の承認フローを社内で二段階に設定する(「各部署で上長が一次承認を行い、人事部が最終承認する」という形) ・外部委託先は集計やチェックまでを担当し、最終承認権限を社内に残すことで責任範囲を明確化できる ・この仕組みにより、委託先処理に問題があっても社内で差し戻し対応が可能
修正や差戻し履歴の保存・勤怠データの修正履歴や差戻し記録を社内で保存・管理する ・外部業者が勤怠データを修正した場合には、修正箇所・理由・修正者・日時をログとして残し、人事責任者が随時確認できるようにする ・問題発生時の原因追跡が可能になり、監査対応でも「いつ・誰が・どのような訂正をしたか」を説明できる体制を整えられる
定期的な内部監査・外部監査・自社の内部監査部門または第三者監査機関による勤怠管理プロセスの定期監査を実施する ・アウトソーシングした業務も監査対象に含め、委託先の処理結果の抜き取り検査や契約遵守状況の確認を行う ・特に個人情報保護や残業上限の遵守など重要項目を重点的にチェックし、第三者の視点を取り入れることで内部統制を強化する

社内統制を効かせておけば、アウトソーシングによる「見えない部分」も管理下に置くことができます。

適切な権限設定と監査を組み合わせ、外部委託業務を含めたトータルな管理体制を構築しておきましょう。


勤怠管理の外部委託が向いている企業



最後に、どのような企業が勤怠管理の外部委託によるメリットを享受しやすいかを整理します。

次のような特徴を持つ企業では、アウトソーシングの効果が大きくなります。


企業の特徴内容
人事労務の専門知識を持つ担当者がいない企業・勤怠管理や労働法令に詳しい人材が社内にいない場合、法改正対応や複雑な勤怠計算でリスクを抱えやすい ・アウトソーシングを利用すれば、専門家の知見を活用でき、正確かつ安心な運用が可能
人事担当者が日常業務に追われ、コア業務に集中できていない企業・少人数体制の人事部では、勤怠管理や給与計算に時間を取られ、採用や人材育成などの戦略業務に手が回らないことがある ・外部委託によって定型業務を削減することで、担当者は本来の企画・推進業務に集中できる
勤怠管理を1人の担当者に依存している企業・中小企業などで勤怠から給与計算までを1名で担当している場合、その担当者が休職・退職すると業務が止まるリスクが高い ・アウトソーシングによってバックアップ体制を確保することで、業務継続性を高められる
従業員数や拠点数が増え、現行フローでは対応が難しくなっている企業・事業拡大により従業員が急増し、多拠点化が進むと、従来の勤怠管理体制では処理が追いつかなくなる ・外部委託によって処理をスケールさせ、システムによる一元管理で効率化を図ることができる
アナログ管理から脱却して勤怠管理をDX化したい企業・紙やExcelによる勤怠管理の限界を感じている場合、アウトソーシング導入と同時に勤怠管理システムを導入することでデジタル化を実現できる ・専門業者の支援を受けることで、自動化・効率化をスムーズに進められる
労務コンプライアンス強化や働き方改革を推進中の企業・残業時間の適正化や年休取得率の向上など、労務環境の改善を進めている企業では、専門家による勤怠データチェックが有効 ・法令遵守の徹底と労務リスクの低減を実現できる

上記に当てはまる企業は、勤怠管理の外部委託によって社内負担の軽減と業務品質向上の両立が期待できます。

自社の状況を見極め、アウトソーシングの導入を検討してみてください。


勤怠管理を外部委託して、社内の負担を確実に減らそう!



勤怠管理の外部委託は、単なるコスト削減策ではなく法令遵守・業務効率・リスク回避のすべてを高水準で両立させる取り組みです。

煩雑な勤怠業務を自社で抱え込むより、専門性と継続支援のある体制に任せることで、経営資源を本業に集中させられます。

アウトソーシングにより、正確で安定した勤怠データの運用と労務リスク軽減が実現し、働き方改革の推進や社員満足度向上にもつながるでしょう。


自社の勤怠管理の仕組みや給与計算のアウトソーシング、人事労務の運用改善などでお悩みの際は、社会保険労務士事務所ダブルブリッジにぜひご相談ください。

専門知識を活かした各種手続き支援や労務改善サポートを行い、企業の労務管理を支えています。

顧問契約により定期的な相談対応やトラブル発生時の早期サポートが可能です。

また、給与計算のアウトソーシングをはじめ、幅広い業務にも柔軟に対応し、労務全般を一括して任せられます。

社会保険労務士事務所ダブルブリッジでは、社会保険労務士4名を含む9名の専門スタッフが在籍しており、社労士業界向けのプライバシーマーク(SRPⅡ認証制度)を取得し、個人情報保護体制を徹底しています。

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