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2025年12月01日

タイムカードのデジタル化とは?機能・メリット・法的要件をわかりやすく解説



紙のタイムカードで勤怠管理を行っている企業では、月末の集計作業の負担や打刻漏れ、そしてタイムカードの保管コストなど多くの課題があります。

たとえば残業時間や出勤日数を手作業で計算したり、過去のタイムカードを長期保管したりする場合、スペースやコストの負担があり、打刻漏れによって正確な勤怠把握が難しくなるケースも少なくありません。

そこで注目されているのがタイムカードのデジタル化です。

パソコンやスマートフォン、ICカードなどによる打刻とクラウド上でのデータ管理に切り替えることで、勤怠情報をリアルタイムに集計・管理できるようになります。


その結果、勤怠管理業務の効率化と法令遵守の両立がより容易になります。

本記事では、タイムカードをデジタル化する仕組みや主な機能、導入によるメリット、関連する法的要件まで、わかりやすく解説します。


タイムカードのデジタル化とは?



タイムカードのデジタル化とは、従来の紙のタイムカードによる出退勤記録をやめ、パソコンやスマートフォンなどを使って電子的に出退勤を記録・管理することです。

かつて多くの企業で行われていた紙のタイムカード打刻では、打刻ミスや紛失のリスクがあるうえ手作業での集計に手間がかかりました。

一方、勤怠管理システムなどITを活用した仕組みに移行すれば、ICカードやスマホでの打刻、クラウド上でのデータ保存によってリアルタイムで勤怠データを把握でき、集計や給与計算も自動化されます。

さらにクラウド勤怠システムを活用することで、拠点が複数ある場合でも本社で一元管理がしやすくなり、離れた場所からでも従業員の勤怠状況を確認できます。

単なるITシステムの導入ではなく、会社全体の労務管理を効率化しコンプライアンス(法令遵守)を支援する仕組みといえるでしょう。


タイムカードをデジタル化した時の主な機能



タイムカードをデジタル化すると、紙のタイムカードでは実現できなかった多様な機能が利用できるようになります。

代表的な機能には、次のようなものがあります。



  • 様々な方法(パソコン・スマートフォン・タブレット・ICカード・顔認証)の打刻機能

  • 勤怠データの自動集計機能

  • 打刻修正・承認フロー機能

  • データの保存・バックアップ機能

  • アラート・通知機能

  • 他システムとの連携機能


こうした機能によって、勤怠管理の効率化やミス防止につながります。

それでは、デジタル化で利用できる各機能について順番に見ていきましょう。


様々な方法(パソコン・スマートフォン・タブレット・ICカード・顔認証)の打刻機能


デジタル化した勤怠管理システムでは、社員が自分の働く状況に応じて様々な方法で出退勤の打刻を行えます。

オフィスではパソコンからの打刻やICカードを専用端末にかざす打刻、外出先やテレワーク中であればスマートフォンやタブレットを使ったモバイル打刻など、職場環境や働き方に合わせて最適な方法を選択可能です。


また、モバイル打刻ではGPSを利用した「位置情報付き打刻」が可能で、直行直帰を装って自宅で打刻するといった不正を防止できる点もメリットです。



顔認証や指紋・指静脈認証など生体認証に対応したシステムもあり、自分以外の第三者が代わりに打刻する「なりすまし」を防ぐ高度なセキュリティにも対応しています。

打刻された情報はリアルタイムでクラウド上の勤怠データベースに反映されるため、タイムカードを回収してExcelに転記するといった作業も不要になります。

柔軟な打刻方法により従業員の利便性と正確性を両立できる点が、デジタルタイムカードの特徴です。


勤怠データの自動集計機能


デジタル化した勤怠システムでは、打刻された出退勤データが自動的に集計されます。

従業員ごとの勤務時間や残業時間、遅刻・早退時間、休憩時間、有給休暇の取得状況などがリアルタイムで計算されるため、月末に担当者が紙のタイムカードを集めて手作業で集計する必要がありません。

紙のタイムカード運用ではExcelに手入力する際にミスが生じやすく、集計にも時間がかかっていました。


システム導入によって勤怠集計を自動化すれば、入力ミスが解消され、業務効率の向上が期待できるわけです。


打刻修正・承認フロー機能


出退勤の打刻ミスや打刻漏れが発生した場合でも、勤怠管理システム上で従業員が打刻修正を申請し、上長が承認するというフローを構築できます。

従業員は自分の打刻時間の修正や残業申請、休暇申請などをシステム上から行えます。


管理者(上長)は打刻忘れの申請や遅刻・早退の申請をまとめて確認し、ワンクリックで承認・否認の処理が可能です。

紙のタイムカード運用のように、打刻間違いを訂正するために書類やメールでやり取りしたり、上司の押印をもらうために時間を要したりすることがありません。

システム上で申請から承認まで完結するため、修正処理のスピードが上がるとともに、承認の履歴がすべてデータに残るため透明性も向上します。


データの保存・バックアップ機能


紙のタイムカードでは、法定の保存期間中すべてのタイムカード原本を保管しておく必要があり、相当な保管スペースや管理コストがかかりました。

一方、クラウド型の勤怠管理システムであれば、打刻データはサーバ上に安全に保存され、必要なときにすぐ検索・閲覧できます。

紙のように物理的な劣化や紛失の心配がなく、万が一オフィスが災害に遭った場合でもデータが消失しにくいという安心感があります。

さらにクラウド上のデータは定期的にバックアップが取られているため、データの消失リスクが極めて低い点もメリットです。

データ保存とバックアップの機能によって重要な勤怠記録を長期間安全に保管・管理することが可能です。


アラート・通知機能


勤怠管理システムには、所定のルールから逸脱した際に自動でアラート通知する機能も搭載されています。

たとえば「出勤すべき時間になっても打刻がない場合に本人と管理者に通知する」「残業時間が一定時間を超えそうな場合に管理者に警告する」「週や月の労働時間が規定を超過した場合に警告する」等の設定が可能です。

実際、紙のタイムカード運用では月末にならないと各従業員の総労働時間が把握できず、気付いた時には特定社員の残業が膨大になっているといったケースも起こりえました。

電子化された勤怠システムであれば、従業員の労働時間をリアルタイムに把握できるため、残業が多い社員にシステム上でアラートを出し、管理者が早期に対応策を講じることができます。

こうした通知機能により、打刻忘れの早期発見や従業員の働きすぎ防止、休暇取得漏れの防止など、適正な労働時間管理をサポートしてくれます。


他システムとの連携機能


勤怠管理システムで記録・管理した出退勤データは、給与計算システムや人事管理システムなど他の社内システムと連携させることが可能です。

たとえば、勤怠データをそのまま給与計算ソフトに取り込めば、毎月の給与計算で残業代や深夜手当を手動で入力し直す必要がなくなり、二重入力によるミスも防げます。

また、人事労務システムと連携すれば従業員の人事情報と勤怠情報を一元管理でき、勤怠情報の活用範囲が広がります(有給休暇の管理や人件費分析への活用など)。

さらに、打刻の仕組み自体を他の入退室管理システムや社内チャットツール等と連動させることも可能です。

たとえば、オフィスのドアの入退室記録と勤怠打刻を連携させて打刻漏れを防止したり、従業員が日常使っているチャットツール上で出退勤の打刻ができるようにしたりすることもできます。

システム間のデータ連携が進むことで、勤怠管理に関わるあらゆる業務を効率化できます。


タイムカードをデジタル化するメリット



タイムカードのデジタル化によって、企業はさまざまなメリットを得られます。

主なメリットを以下に挙げます。



  • 勤怠管理を効率化し、業務負担を軽減ができる

  • ペーパーレス化によるコスト削減ができる

  • 打刻データの正確化・不正防止ができる

  • テレワーク・フレックスタイム制にも柔軟対応できる

  • 労務管理の透明化と法令遵守の強化ができる


こうした効果により、勤怠管理の質が向上し、企業全体の生産性やコンプライアンス体制の強化につながります。

では、それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。


勤怠管理を効率化し、業務負担を軽減ができる


タイムカードの電子化により、勤怠管理業務を効率化して担当者の負担を軽減できます。

紙のタイムカード運用では、毎月末にタイムカードを回収して残業時間を集計したり、打刻漏れの確認や修正に時間を取られたり、人事・総務担当者の業務負荷が大きくなりがちでした。

また、複数の事業所がある場合は各拠点からタイムカードを郵送・集計する必要があり、それだけで手間と時間を要しました。

一方、勤怠管理システムを導入すれば、出退勤データがリアルタイムで集計・集約されるため、月末に人手で計算し直す必要がありません。

打刻ミスの修正処理もシステム上で完結し、煩雑なやり取りが減少します。

勤怠管理の電子化によって「勤怠管理の効率化やミスの軽減、リアルタイムでの一元管理」など多くのメリットが得られることが報告されています。

デジタル化により勤怠管理にかかる工数が削減されるため、本来注力すべき労務戦略や分析業務に時間を充てることが可能になります。


ペーパーレス化によるコスト削減ができる


タイムカードを紙から電子に切り替えると、勤怠管理のペーパーレス化によるコスト削減が期待できます。

まず、紙のタイムカードそのものを購入・印刷するコストや、タイムカードを保管するためのキャビネット・倉庫スペースのコストが不要になります。

法令上、タイムカードなど出勤記録は長期間保存する義務がありますが、紙媒体で数年分を保管するには物理的なスペースが必要でした。



第109条(記録の保存)


第百九条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。


引用元:労働基準法 | 第109条




クラウド勤怠システムに移行すれば、データはすべてクラウド上に保存されるため保管スペースや用紙代が削減できます。

また、紙のタイムカードを廃棄処分する際のシュレッダー作業や廃棄費用もかかりません。

さらに、ペーパーレス化は環境負荷の軽減にもつながるため、企業のCSRの観点からも有益です。

このようにコスト削減と環境配慮を同時に実現できる点も、タイムカード電子化のメリットです。


打刻データの正確化・不正防止ができる


勤怠管理のデジタル化によって、打刻データの正確性が向上し、不正打刻の防止にもつながります。

システムによる打刻では出退勤時刻が自動で記録されるため、人為的な書き間違いや計算ミスが起こりにくくなります。

紙のタイムカードでは、従業員が押し忘れた出退勤時刻を後から書き足したり、実際には残業していないのに残業したように記入を改ざんしたりする不正の可能性がありました。

また、遅刻しそうな社員が同僚に頼んで代理で打刻してもらう「代打刻」の不正も起こり得ます。

一方、勤怠管理システムにはICカードや生体認証による本人確認打刻が導入できるため、本人以外は打刻できず、不正打刻を防止できます。

また、システム上では打刻履歴や修正履歴がすべて残るため、誰がいつ修正を行ったかが明確に記録される仕組みです。

その結果、勤務実績の透明性が高まり、従業員と会社双方にとって公正な労務管理が実現します。


テレワーク・フレックスタイム制にも柔軟対応できる


勤怠管理のデジタル化は、テレワークやフレックスタイム制といった多様な働き方への対応が容易です。

紙のタイムカードでは出社して打刻することが前提のため、在宅勤務や直行直帰の勤務形態には対応が困難でした。

その結果、リモートワーク中の正確な労働時間把握が難しくなったり、タイムカードを打刻するためだけに一度出社しなければならないといった非効率が発生していました。

しかし、クラウド型の勤怠システムであればインターネット経由でPCやスマホから打刻が可能なため、自宅や外出先からでも勤務開始・終了時刻を正確に記録できます。

「出社しないと勤怠管理できない」という状況を解消し、地理的な制約なく働ける環境を整えることができます。

フレックスタイム制の場合でも、コアタイム外の時間帯に各自がリモートで打刻しながら柔軟に働くことが可能です。

勤怠管理の電子化は新しい働き方への移行において欠かせないツールです。


労務管理の透明化と法令遵守の強化ができる


タイムカードを電子化すると、労務管理の透明性が向上し、労働関連法令の遵守徹底に役立ちます。

いままでは、紙のタイムカードではタイムカードが置かれている現場に行かなければ勤怠状況を確認できず、労働時間の実態を把握するにはExcelへの転記・集計が必要でした。

しかし、電子化された勤怠データはクラウド上でリアルタイムに閲覧できるため、常に最新の労働時間状況を把握した上で労務管理上の措置が取れます。

36協定で定める時間外労働の上限遵守や年5日の有給取得義務への対応など、労働基準法上の各種義務を確実に履行しやすくなります。



第36条(時間外及び休日の労働)


第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。


引用元:労働基準法 | 第36条




仮に労働基準監督署から調査が入った場合でも、システムに蓄積された客観的な勤怠データを提出できるため、説明責任を果たしやすいのがメリットです。

さらに、従業員に対しても労働時間の情報がオープンになり、「サービス残業」や「過重労働」の見える化と抑止につながります。

結果として社員の安心感も高まり、企業のコンプライアンス経営の強化につながるのです。


タイムカードをデジタル化するデメリット



紙のタイムカードからデジタル勤怠システムへ移行する企業が増えていますが、実際の現場では「思っていたより大変だった」という声も少なくありません。


確かにデジタル化には多くのメリットがありますが、一方で導入前に理解しておくべきデメリットも存在します。


具体的なデメリットとして、以下の4つが挙げられます。



  • 思ったほどコストが下がらない場合もある

  • デジタル化=完全自動化ではない

  • 有給休暇の設定がとにかく難しい

  • スマートフォンを使えない現場労働者への対応が必要になる


それぞれ詳しく見ていきましょう。


思ったほどコストが下がらない場合もある


一般的なデジタル勤怠システムでは、1名あたり月額300円ほどの利用料が発生します。


さらに、打刻用の専用機を設置する場合は本体の購入費、ICカードを使うなら50枚単位で購入する必要があるケースもあり、初期導入費用が想像以上にかさむこともあります。


紙のタイムカードを保管するキャビネットや倉庫代が不要になるとはいえ、「紙よりコストが減ると思っていたのに、毎月のランニング費用はそこまで変わらない」という声もあるのが実情です。


デジタル化=完全自動化ではない


「デジタルにすれば全部自動でやってくれる」と期待して導入すると、運用段階でつまずく可能性があります。


遅刻・早退・残業の判定は、シフトや勤務時間のパターンを正確に設定して初めて機能します。


初期設定を誤ると、勤務時間がズレて記録されたり、残業が計算されなかったりと、かえって手作業での修正が増えてしまうことも珍しくありません。


有給休暇の設定がとにかく難しい


デジタル勤怠で苦労しがちなポイントが、有給休暇の付与ルールの設定です。


会社によって「入社日ごとに個別付与」「毎年決まった日に一斉付与」など運用が異なり、どちらも正確な初期設定が求められます。


しかし、システム上で有給付与の基準日を誤って設定してしまうと、後からの修正が難しいです。


結果として、社員の有給が正しく管理されず、労務リスクにつながってしまう場合もあります。


スマートフォンを使えない現場労働者への対応が必要になる


現場作業が中心の会社では、高齢の労働者がスマホを持っておらず、デジタル打刻が難しいケースもあります。


直行直帰の社員が多い場合は特に、紙での勤怠記録を併用せざるを得ないこともあり、「紙とデジタルの二重管理」によって管理担当者の負担が増加することがあります。


タイムカードをデジタル化するなら社労士に相談するのがおすすめ!



デジタル勤怠システムは便利で効率的な反面、初期設定を誤ると後々大きなトラブルを招きかねません。


設定項目の多くは専門性が高く、労働基準法への理解も求められるため、担当者だけで正確に設定するのは決して簡単ではありません。


そのため、デジタル勤怠システムの導入時には、労務のプロである社労士へ相談することをおすすめします。


「自社の勤務形態に合わせて最適に設定したい」「現在の設定が正しいのか不安がある」「紙からデジタルにスムーズに切り替えたい」といった悩みも、社労士であれば確実かつスピーディーに解決できます。


そもそもデジタル化は、導入すること自体が目的ではなく、正しく運用して初めてその価値を発揮するものです。


誤設定による混乱が起きる前に、専門家の力を借りながら、スムーズで確実な勤怠管理のデジタル化を進めましょう。


社会保険労務士事務所ダブルブリッジでは、企業ごとの働き方や勤務形態を丁寧にヒアリングしたうえで、最適な勤怠システムの選定から初期設定、運用フォローまで一貫してサポートしています。


勤怠管理に関するお悩みやデジタル化を検討している方は、ぜひお気軽にご相談ください。


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タイムカードの電子化に関連する法的要件



タイムカードをデジタル化する際には、いくつか押さえておくべき法的な義務・要件があります。

企業は勤怠管理を電子化しても、法律で定められた労務管理上の義務は変わらず遵守する必要があります。

主なポイントは次のとおりです。



  • 労働時間の記録義務(労働基準法)

  • 労働時間記録の3年間の保存義務

  • 電子帳簿保存の義務(電子帳簿保存法)

  • 個人情報保護・セキュリティ対策


では、それぞれの法的要件について具体的に確認していきましょう。


労働時間の記録義務(労働基準法)


労働基準法および関連通達により、企業には従業員の労働時間を適正に記録する義務があります。

使用者(企業)は、各従業員の始業・終業時刻を正確に把握し記録しなければなりません。


その際にはできる限りタイムカードやICカード、PCのログ記録などの客観的な記録を基礎として確認・記録することが求められています。

自己申告による届出だけに頼った勤怠管理は不正確になりがちで、長時間労働の見逃しや残業代未払いにつながる恐れがあるためです。

実際、厚生労働省のガイドラインでも「やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合」であっても、原則としてタイムカード等の客観的記録に基づく管理を行うべきと示されています。



使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次


のいずれかの方法によること。


(ア) 使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること。


(イ) タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、


   記録すること


引用元: 厚生労働省「労働時間の適正な把握 のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン




タイムカードを電子化すること自体は法律上の義務ではありません。


しかし、適正な労働時間管理を行う上で客観的な勤怠記録を残すことは不可欠なのです。

また、労働時間の記録義務を果たすことは単に記録を残すだけでなく、適切に残業代を支払い労働時間を管理することで労働基準法違反を未然に防ぐことにもつながります。


労務管理全体への影響


勤怠データの記録精度が上がると、労務管理全体の質も向上します。

たとえば、各従業員の残業時間を正確に把握できれば、36協定で定めた時間外労働の上限を超えていないかを監視できます。

法定の有給休暇取得状況もシステム上で一覧管理できるため、年5日の有給取得義務に対する対応漏れが防げるのです。

さらに、記録された勤怠データを分析することで繁忙期の業務量を予測して人員配置を見直したり、残業の多い部署に対策を講じたりといった労務管理上の改善アクションも取りやすくなります。

万が一、労働基準監督署への報告が必要になったり、従業員とのトラブルが発生したりした場合でも、客観的なデータに基づいて説明・証明ができるため企業を守ることにもつながります。

顧問の社労士や労務担当者への情報共有もスムーズに行えるため、企業全体で労働基準法を遵守した健全な働き方を推進しやすくなるでしょう。


労働時間記録の3年間の保存義務


労働基準法第109条により、使用者(企業)は従業員の出勤簿やタイムカード等の労働時間の記録に関する書類を3年間保存しなければならないと規定されています。



第109条(記録の保存)


第百九条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。


引用元:労働基準法 | 第109条




紙のタイムカードであっても電子データであっても同様です。

2019年の働き方改革関連法に伴う改正(施行は2020年4月)により、この保存期間が「3年」から「5年」へと延長されました(当分の間は経過措置として3年が適用されています)。

そのため、本来は勤怠記録を5年間保存することが望ましいとされていますが、少なくとも現行制度でも3年間は確実に保存する必要があります。

タイムカードの電子化により、過去データをクラウド上に保存しておけば物理的な書庫は不要になりますが、削除や上書きを勝手に行わず所定の期間きちんと保存しておくことが重要です。

なお、保存期間の起算日は記録が「完結した日(最終打刻日)」ではなく「それに係る賃金支払日から起算して◯年」と定められているため、システム上でも過去データの削除タイミングには注意しましょう。

適切に保存義務を果たすことで、万一労使間で過去の残業代等の紛争が起きた際にも証拠資料として活用できます。


電子帳簿保存の義務(電子帳簿保存法)


タイムカードを含む勤怠記録は労務管理上重要な書類です。


勤怠記録を電子データで保存する場合、電子帳簿保存法上の要件にも注意が必要です。

電子帳簿保存法は本来、企業が作成・受領する国税関係書類(請求書や帳簿類など)を電子保存する際のルールを定めた法律です。


勤怠記録自体は国税関係帳簿書類ではないため、電子帳簿保存法の直接の対象ではありません。


しかし、社内文書のデジタル保存について参考になる指針を示しています。

改ざん防止策や検索の容易性など、電子データ保存には満たすべき要件があります。

具体的には、タイムカード等を電子化して紙の原本を破棄する場合、後からデータを書き換えられないようタイムスタンプを付与したり、誰がいつ修正したかのログを残すなどの仕組みです。

また、必要な勤怠データを迅速に抽出できるように、従業員名や日付で検索できる機能を備えることも重要です。

こうした対応を怠ると、監査や調査などの際に電子データの信頼性が担保できず証拠能力が疑われてしまう恐れがあります。

実際、改正電子帳簿保存法への対応では社内規程の整備と社員への周知徹底が必要であり、検索要件やタイムスタンプ付与などのポイントを見落とさないようにすることが強調されています。

タイムカードの電子化においても、データの信頼性と可用性を確保するために、これらの要件を満たしたシステムを選ぶか運用ルールを設けておきましょう。


個人情報保護・セキュリティ対策


勤怠管理の電子化にあたっては、従業員の個人情報保護とデータセキュリティ対策も重要なポイントです。

勤怠データには氏名や勤務時間、残業時間、休日出勤の状況など個人に関する情報が含まれるため、個人情報保護法の下で適切に管理する義務があります。

クラウド上でデータを扱う場合、利便性が向上する一方で情報漏えいのリスクもゼロではないため、万全のセキュリティ対策が必要です。

具体的には、以下の対策が挙げられます。



  • データの通信や保存時における暗号化

  • 不正アクセスを防止するファイアウォールやWAFの導入

  • サーバやデータベースへのアクセス権限の厳格な管理

  • システムログの定期的な監視




さらに、バックアップデータが安全な環境で保管されているか、災害や障害発生時に速やかに復旧できる冗長化構成になっているかも確認すべきです。

加えて、システム提供会社のセキュリティポリシーや個人情報の取り扱い体制をチェックし、信頼できるサービスを選定することも大切です。

自社の情報セキュリティポリシーを整備し、従業員にも安全な運用方法を周知徹底することで、安心・安全に勤怠管理のペーパーレス化を進めていきましょう。


タイムカードはペーパーレス化が便利!「社労士」への相談で実現しよう



タイムカードのペーパーレス化(電子化)は、単に勤怠管理のITツールを導入すれば完了ではありません。

自社の就業規則や労働時間制度の見直し、従業員へのルール周知、労使協定の変更届けなど、クリアすべき実務的・法的な課題も伴います。

自社だけで対応しようとすると複雑な判断や手続きが必要になるため、労務管理の専門家である社会保険労務士(社労士)に相談しながら進めるのが安心です。

社労士に相談すれば、勤怠システム導入にあたって就業規則をどのように修正すべきか、労働時間の適正な運用ルールをどう整備するか、といった点を法律に沿ってアドバイスしてもらえます。

また、運用開始後にトラブルが起きないよう、従業員への説明方法や記録の残し方についても支援を受けることができます。

デジタル化を成功させるためには、こうした専門家のサポートを活用すれば確実です。


静岡県静岡市の社会保険労務士事務所ダブルブリッジでは、社会保険労務士4名を含む9名の専門スタッフが在籍しています。


最新の就業規則作成支援システムを導入し、基本業務・人材育成・DX化支援・障害年金申請代行・外国人雇用対応など、多様な業務に対応しています。

勤怠管理や労務管理のお悩みがありましたら、ぜひ一度ご相談ください。


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